政 策 要 綱

                               改憲をはばみ、修習貸与金請求をやめさせる会
                               代 表  武  内  更  一
                                              (東京弁護士会・38期)  (PDFファイルはこちらから)

貸与金返還請求を撤回させ、給費制を完全復活・遡及適用させよう

 最高裁は7月、修習貸与金の第2回返還請求を行いました。貸与制世代が被っている不公平と苦しみにもかかわらず、日弁連執行部は、最高裁や国に対して何もしませんでした。
なぜ執行部は最高裁にものを言えないのか
 修習貸与金の返還問題は、決して当該世代 の「自己責任」に帰すべきことではありません。
 1999年7月、政府は弁護士激増を「司法改革」の中核的課題とし、司法試験合格者3000人への増員を計画し、法科大学院制度導入と修習1年への短縮を提案しました。当時の執行部は、司法制度改革審議会において、会内の承認を得ずにこれを受け入れ、2000年11月の臨時総会で、かき集めた「白紙委任状」によって採択を強行しました。給費制の廃止は、このときに方向づけられたのです。それゆえ、歴代執行部とその継承者たちは撤回要求ができないのです。
「司法改革」の旗を振った歴代日弁連執行部
 「司法改革」の狙いは、弁護士を、激増による競争の激化により経済基盤を崩し、国家権力や経済的強者への従属を強めさせ、日弁連・弁護士自治を弱体化することにありました。1980年代から始まった「新自由主義」政策は、国鉄をはじめとする「民営化」(行政改革)、「小選挙区制」(政治改革)、「規制緩和」(経済構造改革)と続き、その「最後のかなめ」(司法審意見書)が「司法改革」でした。
 歴代執行部は、会員をないがしろにして、この「改革」に翼賛し、給費制廃止以外にも、法テラスの設置や裁判員制度導入と刑事訴訟法改悪などのお先棒をかついできました。
会員の立場に立ち切り会員を支える日弁連を
 日弁連は、弁護士という職業を維持し、権力の攻撃から会員を守るため弁護士自身が結成し、会員の経済的負担と活動によって成り立っている自治団体です。
  しかし、「司法改革」に屈した歴代執行部は、会員を守る役割を果たさないばかりか、弁護士自治を自ら切り崩しています。
 最高裁や国と対決し、修習貸与金返還請求の撤回を迫り、修習給費制を復活・遡及適用させるには、執行部を一新し、全会挙げて会員を守り、その活動を支えるための日弁連にすることが必要だと考えます。

弁護士激増政策と法科大学院制度を終わらせよう

 2003年には4万人を超えていた司法試験受験者数は、その後、減少の一途をたどり今年は10分の1の4466人。74校あった法科大学院も39校が廃校または募集停止になりました。
 大学、法科大学院での学費の借入れや修習貸与金等で、数百万円から一千万円を超える借金を抱えて弁護士としてスタートするのが当たり前。弁護士になっても激しい競争に晒され、貧窮化させられ、人権課題等に取り組む余裕も奪われています。
 「法曹人口増員」と謳いながら、裁判官・検察官は増員せず、弁護士人口だけ激増させようとした司法試験合格者年間3000人政策。その受け皿として用意された法科大学院制度。執行部は、当初から破綻することがわかっていたにもかかわらず、多くの会員の反対を踏みにじり、この政策に翼賛してきたのであり、その責任は明らかです。今になって、「法科大学院在学中受験」「若手サポート」「修習生への援助」などというのはゴマカシに過ぎません。
 激増政策をやめさせ、法科大学院制度を廃止し、司法修習を充実させて、法曹養成制度を建て直しましょう。

法テラスから扶助・国選の運営を取り戻せ

 日本司法支援センター(法テラス)は法務省所管の独立行政法人として、2006年に設立されました。「検察庁を擁する法務省の所管では、国選弁護制度が歪む」、「法律扶助に対する弁護士会のイニシアティブが奪われる」といった反対の声を押し切り、財団法人法律扶助協会が行ってきた民事法律扶助と弁護士会が運営していた刑事国選を取り上げたのです。
 法務大臣が認可する業務方法書、法律事務取扱規程で弁護士はがんじがらめです。審査のための書面や資料の作成にとられる手間。形式的な書類をあくまでも要求する官僚的な対応。勝訴の見込みに関する不必要に厳格な審査など、現場の不満は枚挙にいとまがありません。
 報酬はあまりにも低すぎます。大規模に広告を打ち、公的機関でもある法テラスの報酬基準は、マチ弁の報酬を引き下げる効果をもたらしています。また、生活保護や外国人支援などの委託援助事業なども法テラスとの契約が必要で、契約しないと受任できる事件の幅が狭められます。困っている人のために、という弁護士のやりがい搾取が続いています。
 法テラスは決して弱者を守るための組織・システムになっていません。徹頭徹尾「官」の発想によって支配されています。弁護士会に民事扶助と刑事国選を取り戻しましょう。

弁護士活動をしばる「職務基本規程」改悪に反対

 現執行部は弁護士職務基本規程の改悪を執拗に狙っています。
 昨年、依頼者の「法令に違反する行為」を知ったときそれを避止するよう説得する義務の新設と守秘義務の範囲の「依頼者の秘密」から「職務上知り得た秘密」一般への拡大を提案し、会内から強い反対を受けて撤回。にもかかわらず、今年も理事会で守秘義務の拡大を提案し、現在、2020年2月末を期限に会内に意見照会を行っています。
 執行部案は、相手方や第三者の秘密、第三者が情報源の秘密も守秘義務の対象にしようとするもので、濫訴的な懲戒請求の口実になることは必至です。私たちは、権力からの介入を招いたり、弁護士の活動を萎縮させる改悪にはまっこうから反対します。

弁護士自治と強制加入制を堅持しよう

 戦前の弁護士は、弁護士会への加入は任意とされ、懲戒権を国家(当初は司法省、後に裁判所)に握られていました。国策にたてつく弁護士は不当な懲戒によって攻撃され、やがて弁護士全体が日本の侵略戦争に翼賛していきました。
 戦後、日本の弁護士は、この歴史に対する反省から、日本国憲法の原理である基本的人権擁護を「使命」として掲げ、すべての弁護士の基礎的団結体としての弁護士会・日弁連を結成し、「弁護士自治」に関する規定を盛り込んだ現行弁護士法(1949年)を制定させました。弁護士自治は日本国憲法にその根拠を置くものといえます。
 弁護士自治は、①弁護士会への強制加入制と弁護士会による入会審査権、②弁護士会の会則制定権・自主運営権、③弁護士会の所属弁護士に対する懲戒権の独占(自主懲戒権)などから成り立っています。自主懲戒権は弁護士の懲戒に国家権力が介入するのを防ぐことを目的とし、強制加入制は自主懲戒権の基盤をなしています。強制加入制でなければ弁護士は分断され、懲戒権は再び国が持つことになります。
 「強制加入団体」であることを理由に、「日弁連・弁護士会は改憲問題に対する発言を控えるべき」との主張は、弁護士会の強制加入制と自主懲戒権が、基本的人権擁護のためのものであることを見ない謬論です。戦争は最大の人権侵害であり、改憲問題につき日弁連・弁護士会が議論し、発言・行動することを回避するのは、自ら存在意義を否定するものです。

刑事司法大改悪への翼賛を止めよう

 2016年、日弁連は、「可視化」と引きかえに司法取引導入と盗聴の大幅拡大という歴史的大改悪を容認し、刑訴法改訂の旗を振りました。20を超える単位会と、冤罪被害者等の強い反対を押し切ってなされた暴挙でした。しかし、「取調べの録音録画」は取調べの適正化にならないばかりか、「自白」場面の映像や音声が「有罪」の心証形成に大きく影響することが明らかになりました。警察・検察は、録音録画という新たな武器を手に入れるとともに、日弁連の協力を得て司法取引、盗聴拡大という積年の念願を達成したのです。
 日弁連は、「可視化幻想」に踊らされ権力との取引に走った負の歴史を徹底的に総括しなければなりません。予断排除、公開主義、証拠裁判主義などの刑事司法の基本原理を解体する裁判員制度の旗を振った責任もあります。
 被疑者の権利の大本に立ち返り、代用監獄廃止、「取調べ受忍義務不存在」の明定、人質司法の打破など、本来的な要求の運動を進めるとともに、破綻した裁判員制度の廃止に向けて歩を進めましょう。

憲法9条の破壊と緊急事態条項の新設を阻もう

  資本主義経済は行き詰まり、金利引き下げや自国債の買い上げなどの各国の金融政策も限界です。世界中で急速に経済ブロック化が進められ、国家間の利害対立が激化しています。
 安倍政権は、この状況を戦争で突破しようとしています。ナショナリズムと排外主義を煽り、「徴用工」問題を口実にして韓国に対する「経済戦争」の口火を切りました。天皇代替わりの儀式、東京オリンピックなど、マスメディアも政府と一緒になってナショナリズムを煽り立てています。過去の戦争もナショナリズムと排外主義を煽り、「自衛」を口実にして民衆を侵略戦争に動員して行われました。
 安倍首相は、2020年通常国会で憲法審査会を動かし、改憲発議を断行しようと狙っています。自民党改憲案は「自衛隊」を明記して戦争を合憲化し、国民動員の根拠とします。緊急事態条項は、政府に法律と同じ効力を持つ政令の制定権を与え、独裁により人権をふみにじります。日弁連執行部は、このような改憲案に明確に反対せず、強制加入団体であることを理由に議論すら封じようとしています。
 弁護士には、1920年代からの激増政策による貧窮化の末、「弁護国営、国家による弁護士の生活保障」という「職域拡大論」が強まり、国家主義・排外主義と結びついて、「大日本帝国の自存・自衛」としてアジア・太平洋戦争翼賛に雪崩れこんでいった歴史(日満法曹協会設立、「紀元2600年奉祝全国弁護士大会」等)があります。今の日弁連は、この歴史を繰り返していないでしょうか。
 私たちは、全国の弁護士が改憲阻止に立ち上がることが今こそ必要だと考えます。
                            (2019年11月) 【ページトップへ】